コンポジター座談会 その3 学生さんに伝えたいこと

映像とか絵づくりにも意識を向けて経験を積んで欲しい

藤川

次、学生さんに伝えたいこと、いきましょう。

藁谷

学生さんと言うか、僕、ちょっとこの機会に言おうかなと思っていたことがあって。

藤川

なんでしょうか。

藁谷

最近リアルタイムCGがずいぶん前に出てきてるじゃないですか。

藤川

はい。

藁谷

それに伴ってか、最近は「CG好き」とか「映像好き」とかではなくて、「CGしかやってない人」っていうのが多くなってきて、「コンポはいらない」というようなノリのことを言う人がいるんですよ。
そういうこと言われると、映像がわかってないなぁと思いますね。

藤川

というと?

藁谷

映像って、とくにエンターテインメントの場合ですが、「演出」が肝じゃないですか。
たとえば、衝撃波が飛ぶシーケンスがあったら、衝撃があったように錯覚させるためにブラーの画を一瞬混ぜておいたり、一瞬だけスケールを大きくしたり。
何かが衝突する時とかは、目を凝視して見るような効果を出すために、レンダリング後のコマを数枚わざと抜いたり、一部分だけ大きくしたりしてわざと違和感を出したり。
「見ている人にこういう印象を与えたい」からこういう絵づくりをするという意識が抜けてしまっているのが残念なんです。

太田

それは確かに。

藁谷

今はリアルタイムのCGだったり、グローバルイルミネーションだったり、適当にやってポチッとしたものが完成形みたいな風に捉えてしまっている方が多いのが…。
ブラーにしても、コンピュータに任せると運動量をたどるような計算結果が出てくるだけなんだけど、見せたいキャラを引き立たせるためにわざと、強調したブラーを入れたり、エフェクトなんかもこだわるべきですよね。
「こういう構図で見せたいんだ」っていうときは、実際の爆発のエフェクトに対して、1フレームずつ確認していって、変形させたり、画面を横切る破片を追加したり、そういう「演出」がコンポジットの醍醐味だと思うんですよ。
これからCGをやっていく学生さんにはそのあたりを意識していってほしいなと思います。

藤川

確かに最近は同じ画に見えるCGというのが増えましたよね。
まさか藁谷さんからこんなちゃんとした意見が出るとは…。

藁谷

ちょっと!
でもまぁ、プロの人はみんな日常的にやっていることだと思いますので、プロを目指す方は頑張ってほしいですね。

絵コンテや演出について学生のうちに勉強しておくといい

藤川

太田さんは学生さんに何を伝えたいですか?

太田

そうですね、CGの扱いとか、モデリング単体とか、モデリングするためのデッサンとか、そこらへんは昔に比べて、レベルが上がってきていると思うんですけど、映像を演出するために、絵コンテ上でどういうふうに描いていくのか、このコマをどうしていけば上手く伝わるようにできるのかとか、っていう部分を勉強してみるといいと思います。
ほとんどの人がこの辺りを全然経験せずにそのままポン、と業界へ入っちゃうんで、そこから初めて勉強していくってことになると、結局、独学でスタートすることになってしまうので結構大変だと思うんですよ。
学生のうちになるべく、そこまで手を出してやっていた方が後々絶対に得ですよっていうのをいつも思いますね。

藤川

昔からそんな感じなんでしょうか?

太田

いやいや、昔のほうがひどいなとは思いますよ。
自分の時代からしたらだいぶレベルが上がっていると思うので、次のステップは「演出」の部分かなと思います。

藤川

なるほど。
そういえば、海外と日本とで学校での教え方ってやっぱり根本的に違うらしくて、海外だと学校入った時点で、モデラー、アニメーター、コンポジターのどれって感じに選択して、それ以外はやらないっていう風に、スタートから完全に別れてしまっているらしいですね。
だから特化したスペシャリストが育ちやすいという。

太田

ふむ。

藤川

日本だと全部をまんべんなく教えようとするから、モデリング⇒アニメーション⇒コンポジットという形で進めていくので、最初の工程にあたるモデリングの完成度は高いけど、あとの工程にある作業については完成度が追い付いていかないという状況が生まれてしまう。
結果的にモデリングしかできてない学生さんや、モデラー志望の学生さんが増えているのかなと思いますね。

藁谷

日本の場合、ジェネラリストが欲しい状況が多いから、作業の細分化は難しかったりするので、なかなかね。

藤川

そうなんですよね。
正直、会社で考えることではないのかもしれないですが、どういうカリキュラムがいいんだろうとかは漠然と考えちゃいますね。
現場としても、やはりいい人材は欲しいですし。

映像は何でも毛嫌いせずに見ておくといい

藤川

三浦さんはいかがでしょうか?

三浦

とりあえず、映像は何でも見ておけ、とかですかね。

藤川

たとえば具体的にこんな映像を見たほうがいいよ、とかはありますか?

三浦

いや、逆に限定しないほうがいいと思います。
CGばっかりとかアニメばっかりとかじゃなくて、実写も、それこそ舞台でも、歌舞伎でも。

藤川

なるほど。

藁谷

演劇面白いですよね。
片桐はいりを浅草へ見に行ったときとか強烈だった。
声の張りとかはやっぱりスゴかったですね。気迫を感じるというか。
遠くの人にも見せなきゃならないから、そのための演出なんでしょうね。

藤川

全身での表現を学ぶには演劇とかはいいですよね。
映像だと見切れている部分の動きって脳内補間するしかないですし。

三浦

どんなものでも見れば何か学ぶことや感じ取ることができるはずなんですよ。
引きだしを自分の中で増やして、いつか使えるようにしておくといいです。